【配役】
勇者
神父
神父:ようこそ我が教会へ
生きとし生けるものは皆、神の子。本日はどのようなご用件ですか?
勇者:はい、昨日の戦闘で戦士が死亡してしまったので生き返らせて欲しいのですが。
神父:蘇生ですね。それでは、我が教会に200ゴールドのご寄付を。よろしいですか?
勇者:えっ?200ゴールド…ですか?
神父:えぇ、それが何か?
勇者:いえ、前の時は確か10ゴールドだったはずなんですけど…随分と寄付額が高くなったなと思って…
神父:あぁ、それはレベルでの金額の差ですね。おそらく前回の時はレベルが低かったんじゃないかと。
勇者:確かにあの時はレベル1でしたけど…えっ?レベルで寄付額って変わるものなんですか?
神父:えぇ、我が教会のみならず、どこの教会でもそうだと思いますよ。
勇者:うーん…それって教会としてはどうなんですかね?まずくないですか?
神父:というと?
勇者:だってレベルで蘇生での寄付額を変えるってことは…つまりは人の価値をレベルで区別してるってことにならないですか?
神父:えっ?そ、そんなことは無いですけど…
勇者:でも実際に教会の方々は相手のレベルで寄付額の要求を変えてるわけでしょ?
明らかに区別…というか差別にもなるんじゃないかなぁ…
神父:そんな人聞きが悪い!我々はただ教会からの指示を実行しているだけですから…
勇者:でも…一応、教会は神の代弁者ってことになってるんですよね?
神父:それはもちろんです。我々は神の言葉を代弁して語っておりますから。
勇者:その神様が「レベルによって寄付額を変えなさい」と指示したってことですか?
神父:えっ?いや、そこはなんとも…私達も上からの指示で職務を全うしているだけですから…
勇者:そもそも寄付というのも、こちらからの感謝の気持ちを金額に反映させるものであって、そちらから寄付額を指定されるのがそもそもおかしいとは思うんですよね…
神父:そんなことを言われましても…それこそ昔からある慣習なので我々からはなんとも…
勇者:今までおかしいと思わなかったということですか?
神父:そうですね…上からの指示を疑うということは神を疑うということですから。
勇者:うーん…ちなみに寄付額というのはどういう指示が出ているんですか?
神父:それは…この聖書の巻末が寄付額表になってるのでそれに従うようにと…
勇者:えっ?聖書にそんなことも書かれてるんですか?
それは流石におかしいでしょう…見せてもらってもいいですか?
神父:えぇ、構いませんが…
勇者:うーん…「寄付額表」とは書かれてるものの、これは完全に「料金表」ですよねぇ…
神の名を借りて商売してるって言われても仕方ないですよ?
神父:そんなことは無いです!あくまで頂いているのは「料金」ではなく「寄付」ですから!
勇者:うーん…ただの言葉遊びにしか聞こえないですけど…まぁ、そこは百歩譲っていいとして…
確か、先程、あなたは「生きとし生けるものは皆、神の子」とおっしゃいましたよね?
神父:えぇ、確かに言いましたけど…
勇者:我々も一応、「神の子」ということで良いんでしょうか?
神父:えぇ、それはもちろんです。
勇者:ということは、神様は自分の子を助ける時にお金を要求する…ということですか?
神父:えっ!?そ、それは…そんなことは無い…と思いますけど…
勇者:でも実際にこうやって聖書にも寄付額を指示してきてるわけですよね?
自分の子を助けるのに、子にお金を要求する親って…どうなんですかね?
神父:そ、それは…私の口からはなんとも…
勇者:色々と神の定義と矛盾してると思うんですけど…その聖書に書かれている言葉って本当に神の代弁なんですかねぇ…
あなたの信じる神というのは、そのような自分の子にお金を要求する存在なんですか?
神父:そ、そんなことは無いです…神は万人に無償の愛を振りまく偉大な存在ですから…
勇者:ですよねぇ…
私も神は偉大な愛をお持ちで、決してお金を要求するような存在ではないと思いますから。
神父:えぇ…もちろんです…
勇者:ということで…寄付額のお話に戻るんですけど…
神父:…あなたのお気持ちの額で結構です。
勇者:あ、そうですか!?
すみませんねぇ…何か無理を言ったみたいで。
【おしまい】