女(♀)
男(♂)
女:今日は待ちに待ったお花見だねぇ♪
男:そうだなぁ…っていうか、テンション高いなぁ…
女:だって見てよ♪
こんな満開の桜を見ながらお酒を飲んではしゃげるなんて夢のようじゃない♪
男:お前、お酒好きだもんな…
まぁ、はしゃぐのはまだ数時間後だけどな。今はまだ花見の場所取り中だ。
女:そうなんだよねぇ…こんなに朝早くから場所取りしなきゃいけないなんて意外だったよ。
正直面倒くさいよね…
男:古今東西、昔っから俺たちのような新人のお決まりのお仕事だからなぁ。
でも早すぎるってこともなさそうだぞ?現にチラホラと場所取りの人はいるみたいだし。
女:あの人達も私達と同じ感じなのかな?
お互い大変そうだねぇ…
男:でも場所取りを失敗しちゃったら上司とかから大目玉だからな。そりゃ必死にもなるさ。
俺も仕事じゃなかったら正直やりたくない。
女:そういえばさっきからテンション低いよね?
お花見は嫌いなの?
男:桜は好きだけど、酒のんで騒ぐのが嫌いなだけだよ。
俺は静かに桜を眺めて過ごしたい派。
女:へー…なんかおじいちゃんみたい。
男:ほっとけ。お前は花より団子…というより酒って感じだもんな。
女:失礼な!ちゃんと桜も好きだよ!!
こういうきれいな景色を見ながらだと、よりお酒も美味しく感じるし♪
男:うん、酒への愛しか感じない。
女:ほんとだって!日本人で桜が嫌いな人ってそうそういないんじゃない?
男:まぁ、確かにな。
馬鹿騒ぎは嫌いだけど俺も桜は好きだし。なんか心が和むと言うか…
女:不思議だよね?日本人独特の感覚なのかな?
男:日本人の桜好きは諸説あるみたいだけどね。
花見に関連した説だと…サガミ信仰が有力かな。
女:サガミ信仰?何それ?
男:八百万の神様の中の「山や田の神様」の「サガミ」、「サ」に神って書く神様がいるんだよ。
そして神様が鎮座するところを「クラ」というんだけど、そのサガミが鎮座したと言われる木が後々にサの神様のクラ…「サクラ」と呼ばれるようになったらしいよ。
女:へー…そんな神様がいることを初めて知った。
男:まぁ八百万っていうくらい日本には神様が多いから知る機会もなかなか無いからね。
そして、昔の農民たちはその神様を信仰するためにサクラの木にお供え物をして豊作を願っていたんだって。
その遺伝子が受け継がれているせいで、日本人はサクラが好きなんじゃないかって言われてるみたいだよ。
女:へー、そうなんだ。
確かに桜を見てると、何故か分からないけど不思議と和むもんね。
男:確かに理由は分からないけどそういうのはあるよね。だから遺伝子レベルの刷り込みというのもなんとなく信じてしまうよ。
女:そうだ!桜の逸話といえば私も知ってるよ!
「きれいな桜の木の下には死体が埋まってる!」
男:あぁ、よく聞くよね。
女:そういえば、この桜も他の木と比べて一段ときれいだよね?
もしかして死体が埋まってたりして…試しに掘ってみようか?
そこの木の影に都合よくシャベルも落ちてるし♪
男:酒も飲んでないのに何テンション上がって来てるんだよ。止めとけって!
女:いいじゃん、どうせ暇なんだし♪
男:ったく…しょうがないなぁ…あとでちゃんと埋めとけよ。
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女:…なんてことがあったけどあれから一年かぁ…
時間が過ぎるのは早いもんだね。
男:あぁ…まさか本当に死体が出てくるとは思わなかったもんな。
女:事情聴取やら何やらで結局花見は中止。上司や周りのみんなからは余計なことすんなと
大目玉。いやー、参った参った。
男:少しは反省しろ…
【おしまい】