お雛様(♀)
お内裏様(♂)
お雛様:ひなまつりも終わって、ようやく私達もお役御免ね。
お内裏様:あぁ、そうだねぇ。
お雛様:それにしても、毎年ひな祭りのためだけにこんな豪勢な雛飾りを作るなんて…日本の親ってなかなかに酔狂な人たちよね。女の子をもつ親って大変そう…
お内裏様:まぁ、たしかにね。
でも、かわいい我が子のためなら、そんな苦労どうってこと無いってことなんじゃないかな?
お雛様:そんなものかしらね。
お内裏様:あぁ、ちなみに僕たちは、ご両親じゃなくて、娘さんのおじいさんおばあさんが用意してくれたものらしいよ。
お雛様:あぁ、そっちのパターンなのね。
お孫さんで、しかも可愛い女の子だったら目に入れても痛くないだろうし、なんでもしてあげたいって思うのかもしれないわね。
お内裏様:まぁねぇ…なにせ、三人官女、五人囃子もついてるフルセットだからねぇ、僕らは…値段を考えると愛されまくってるのは間違いないと思うよ。
お雛様:へぇー…ちなみにおいくらくらい?何万円?
お内裏様:いやいや、何十万円の世界だから…
お雛様:ひゃー!そりゃ間違いない…愛されてるわ、この子…
お内裏様:金額が全てじゃないとは言え、これだけのものを用意してくれてるあたり、愛されてるというより、溺愛のレベルだろうねぇ…
お雛様:そういえば…そもそも何で私達がひな祭りに飾られるようになったの?
お内裏様:あぁ、それは元々は厄除けが始まりらしいよ?
お雛様:厄除け?
お内裏様:そそ。
人形を自分の身代わりとして穢れを移し、それを川に流して厄除けをしてたのが始まりなんだって。
お雛様:えっ?
昔の人達って私達を川に流してたの!?どれだけ贅沢な行事なのよ…
お内裏様:いやいや、流石にそんな事はしてないよ。
昔は紙で作った人形(ひとがた)を川に流して厄除けする「流し雛」という形式だったみたい。
お雛様:あぁ、そうなんだ…びっくりした。
毎年、川に私達を流されてたら川が雛人形だらけで大変なことになるもんね…
お内裏様:どうみても不法投棄にしか見えないもんね…
厄除けどころか、雛人形たちの恨みが溜まって呪いをかけられてしまいそうだ…
お雛様:それで、その流し雛からどうやって今の私達の形になったの?
お内裏様:なんでも昔の貴族の子供達の「雛(ひいな)遊び」というおままごと遊びと結びついて、それから流し雛も紙人形が男女一対の形になったんだって。
それが僕達、お内裏様とお雛様の原型になったと言われているらしいよ。
お雛様:へぇー…そういう由来があったんだ…
お内裏様:それから時代が進むにつれて、紙人形から人形へと形が変わっていって、段々と「流す物」から「飾る物」になっていったんだって。
流石にそういう人形を持ってたのは貴族とかお金のある人達だったみたいだけどね。
お雛様:あぁ、そこは今も昔も変わらないんだ…なるほどねぇ…
お内裏様:そういう偉い人達だけのお祭り事だったんだけど、段々とひな祭りに対しての庶民の憧れが高まっていって、結果的に町を挙げてのお祭り事に発展していったんだって。
お雛様:へぇ…そのお陰でこうやって一般家庭でもひな祭りのお祝いが出来るようになったわけね。
お内裏様:ちなみに最初の頃は、僕達、お内裏様とお雛様の男女一対が「雛飾り」の基本の形だったみたいだね。
江戸時代くらいになってきて、段々と今の僕達みたいに着物が豪華になっていったり、金の屏風の前に飾られたりと豪華になっていって…江戸時代後期になると三人官女や五人囃子とか飾る人形も増えてきて更に立派に、そして豪勢になっていって今の「雛飾り」の形に変化していったみたいだよ。
お雛様:私たちに歴史あり!だねぇ…
お内裏様:そうだね。
今じゃなんとなくお祝いされてる感じもするけど、たまには本来の意味に立ち返って、子供の健やかな健康を祝うっていうのも悪くないかもね。
お雛様:確かに…
今じゃ単に「ケーキを食べられる日」くらいにしか思われてない気もするし。
お内裏様:昔は「ちらし寿司」が一般的だったけど…ひな祭りケーキも段々と浸透してきてる感じがするからねぇ。
でもまぁ、僕達のお祭り自体、歴史と共に移り変わって来たんだし、もしかしたら数十年、数百年したらまったく違ったものに変化してるかもしれないね。
お雛様:どんなのになるんだろう…私達の人形が美少年・美少女フィギュア化とか?
あ、可動式で好きなポーズ取らせられるのも面白いかも?
お内裏様:ははは…まさかそこまでは…いや、ありえなくはないかもなぁ…
【おしまい】