剣士(♂)
魔法使い(♀)
剣士:ふぃ〜…やっと一息付けるぜ…とりあえずお疲れ!(乾杯)
魔法使い:私も今回は疲れたよ…しかし、予想外にやっかいな依頼だったからねぇ
剣士:確かに…何が「簡単な遺跡の調査依頼」だよ…あんなにモンスターが湧いてるなんて聞いてないっての…あれじゃ報酬の割にあわないよな?
魔法使い:ま、そのへんはあとでギルドに文句言って報酬を割増ししてもらいましょ?
剣士:そうだな。
ともかく、今回も無事に戻れて良かったよ。
魔法使い:だね。
…でもさ、最深部でモンスターに囲まれた時は流石に危なかったよね?
私、久々に死の覚悟したもの。
剣士:あぁ、今思ってもよく生き延びられたなとは思うな。
あれだな、火事場の馬鹿力ってやつかな?(笑)
魔法使い:やっぱり、人間、死に直面すると底力を発揮するものなのかな?
剣士:うーん…というより、どっちかっていうと金の方が心配だったかな、俺は。
魔法使い:あぁ、そっちの方か。
確かに、死んじゃって蘇生屋のお世話になると問答無用で持ち金の半額持っていかれるもんね。
剣士:あいつら本当に容赦ねぇからなぁ…せっかくダンジョンでお宝を見つけても、ちょっとヘマしたらあいつらに大半持ってかれちまうし…
「そう何度も持ってかれてたまるか!」ってがむしゃらに戦ってたら何か切り抜けられてたわ。
魔法使い:金の力恐るべしって所ね。
今まで蘇生屋対策として持ち金は最低限にしてたけど、あんたと組む時は逆に全財産持っていったほうが生存率あがりそうだわ。
剣士:おいおい勘弁してくれよ。
そんなの危なっかしくて戦いに集中出来ないっての。
魔法使い:冗談よ。
あぁ、そう言えば…前から気になってた事があるんだけど聞いてみても良い?
剣士:なんだ?
金なら貸さんぞ?
魔法使い:違うわよ、馬鹿。どうせ貸すほども持ってないくせに。
そうじゃなくて、あんたが戦ってる時のことよ。
剣士:戦ってる時?
…俺、何かしたっけ?
魔法使い:あんたって、技を放つ時にいっつも前口上言ってるけどさ?
あれって毎回言わないといけないものなの?
剣士:前口上…?
…あぁ「猛り狂う漆黒の狼よ!」ってやつか。
魔法使い:そう、それそれ。
毎回毎回律儀に言ってるけどさ。言わないといけないものなのかなって。
剣士:いや、別に言わなくても問題はないぞ?
魔法使い:えっ!無いの?
んじゃなんで毎回言ってんのよ…かなりのタイムロスだし、さっさと攻撃した方が効率的じゃん。
現に今回も危なかったし…
剣士:あぁ、ちょっと語弊があったか。
言わなくていいっていうか、別の言葉でも問題ないって意味。
魔法使い:ん?どういうこと?
剣士:ぶっちゃけていうと、技を放つために集中して気を溜めてるんだわ。
だからどっちにしろ攻撃するまでの時間は掛かっちまうし、だからその時間の間あの言葉言ってるってだけ。
魔法使い:なんだ、そうだったの。
だったら普通に集中して普通に技放てばいいじゃん。
剣士:普通にって言ってもよう…
ただ「うぅぅぅぅぅぅぅ……はぁっ!」って技放つやつってどうよ?
魔法使い:普通にダサいし、もうちょっと魅せ方工夫しろとは思うかな?
剣士:だろ?
だからその溜めの時間を稼ぎつつ、且つダサくないようにこっちも工夫してるんだよ。
それにダサいと誰も憧れてくれないし、流派が廃れちまうからなぁ。
魔法使い:それもそうか。
あんたも我流じゃなくて師匠いるんだっけ?
剣士:そそ。
あの前口上も師匠からの受け売りだし、ずっと受け継がれてるらしいぜ?
魔法使い:ふーん、なるほど…
剣士:それに、前口上を言うと大抵の場合は「あっ!?なんかやばい技が来るな!?」って相手も身構えて距離を取るから、時間も稼げるっちゃ稼げるのよ。
いつ放たれるか分からない危ない技を発動前に止めようと飛び込むやつもそうそう居ないしね。
魔法使い:へぇ〜…単なる中二病的なものだと思ってたけど、ちゃんと理由があったんだね。
剣士:っていうか、お前今まで「中二病」でやってると思ってたのかよ?
魔法使い:ちょっとはね?
まぁ、誤解が解けたんだからいいじゃん♪
剣士:よくねぇよ!
…ったく、心外だわ。
魔法使い:あ、そういえばもう一個疑問に思ってたことがあるんだけど聞いてもいい?
剣士:ん?何だよ。
魔法使い:あんたってこっちの生まれよね?
剣士:あぁ、生まれも育ちもここだぞ?
魔法使い:使ってる武器は?
剣士:愛用のロングソード。
魔法使い:なのになんで技名が「餓狼影牙刃」みたいな東洋系の名前になってるわけ?
剣士:それは…何でだ?
魔法使い:あ、もしかして師匠が東洋系とか?
剣士:いや、バリバリの西洋系だな…
魔法使い:んじゃ、師匠が東洋系の剣…刀だっけ?それを使ってたとか?
剣士:いや、師匠もロングソードだったはず…
魔法使い:んじゃ何でそんな技名になってんのよ?
剣士:知らねぇよ…んなこと疑問に思ったこと無かったし…
昔っからそういう技名としか聞いてないからなぁ…言われてみれば何でだろ?
魔法使い:普通だったら「シャドウファング」みたいな名前が付きそうだけどね…
昔は刀を使った技だったとか?
剣士:いや、そんな話は聞いたことないしなぁ…あ!あれじゃねぇか?
東洋の吟遊詩人が西洋に憧れてこっちの言葉を詩に盛り込んだりするだろ?
たぶんそんな感じで先人が付けたんじゃないか?
魔法使い:東洋の言葉使ったらなんか格好いいな!って感じ?
剣士:そうそう!そんな感じ。
魔法使い:東洋のあこがれからか…なんだ、やっぱり中二病じゃん。
剣士:なんだと!?
魔法使い:あ、そんなことより料理来たよ。
とりあえず食べようよ。
剣士:そんなことよりじゃねぇ!
人の流派馬鹿にしやがって…
魔法使い:もう…そんなことどうでもいいじゃん。
剣士:どうでもよくねぇ!
ちゃんと訂正しろ〜!!!
【おしまい】